こんにちは。
最近では、ソーシャルゲーム、通称「ソシャゲ」の「ガチャ」システムが一般に広まりつつあります。
これは簡単に言うと、お金を払うことで欲しい商品が確率的に手に入るというシステムです。
確率に依存するため、当然たくさん引いても欲しい商品が出ない場合もあります。
これに対する救済措置として、一定回数引くと必ず欲しい商品が手に入る「天井」というシステムが導入されているゲームもあります。
このガチャシステムに対して、時々ネタとして「出るまで回せば確定ガチャ」というような謳い文句を聞きますが、果たしてこれは本当に正しいのでしょうか。
今回はこのことについて詳しく考えていきます。
ガチャの不規則性
この記事では、ガチャからは確率通りに不規則に排出されるものとします。
ガチャは “不規則” と仮定
実際にはゲームシステムの都合上、確率的な事象は擬似乱数生成によって”規則的” “確定的”に決定されていますが、これは記事の趣旨とは異なるため、今回はシステムの乱数については考えないこととします。
引いた回数に依存するガチャ
通常のガチャでは排出率が常に一定となっていますが、まずは排出率が引いた回数に依存するという特殊なガチャについて考えてみます。
引くたびに 1/3 になるガチャ
1回目の排出率が 1/3 で、1回引くたびに排出率が 1/3 倍になるガチャを考えます。
このガチャの排出率は以下の表のようになるのですが、このガチャには非常に大事な性質があります。
それは、大量に引いても、当たりが出る確率は100%に近づかないということです。
回数 | 排出率 |
---|---|
1 | 1 / 3 |
2 | 1 / 9 |
3 | 1 / 27 |
… | … |
例えばこのガチャの場合、何回引いたとしても当たりが1回以上出る確率は 1/2 未満となります。
簡単に言うと、大勢の人たちがずっとガチャを回し続けたとしても、半分以上の人は当たりが出ないということです。
このように、大量に引いても100%にならないガチャもあるということを覚えておいてください。
確率計算に興味がある方は以下のコラムも読んでみてください。
(興味のない方は飛ばしていただいて結構です)
確率計算
$n$ 回目までに当たりが1回以上出る確率を $p_{n – 1}$ とおき、$p_n$ の上限を求めます。
1回目の排出率は $a$ 、1回引くたびに排出率は $r$ 倍になるとします。
$$\begin{eqnarray*}
p_n – p_{n – 1} &=& a r^n (1 – p_{n – 1}) \\
&<& a r^n
\end{eqnarray*}$$
これは階差数列の不等式なので、
p_n &<& \sum_{k = 0}^{n} a r^k \\
&<& \sum_{k = 0}^{\infty} a r^k \\
&=& \frac{a}{1 – r}
\end{eqnarray*}$$
よって、$a = \frac{1}{3}, r = \frac{1}{3}$ とすると、任意の $n$ に対して
が成り立ちます。
引くたびに 半分 + 切り捨て
次に、排出率 [%] が1回引くたびに半分になり、さらに小数点以下が切り捨てられるというガチャを考えます。
1回目の排出率を 50% とすると、排出率は下の表のようになります。
回数 | 排出率 [%] |
---|---|
1 | 50 |
2 | 25 |
3 | 12 |
4 | 6 |
5 | 3 |
6 | 1 |
7 | 0 |
8 | 0 |
… | 0 |
このガチャも先程と同じく大量に回しても当たりが出る確率は 100% に近づきませんが、そもそも 6回目までで出なかった時点で絶対に当たりは出ません。
この例は、先程の例をより明確にした例となっています。
以上、2種類のガチャを紹介しましたが、これらのガチャに対して「出るまで回せば必ず出る」という文は正しいでしょうか。
もし仮に、「出るまで回す」ことができた場合、当然「必ず出る」は成り立っています。
つまり、論理的に見ればこの文は演繹的で正しいと言えます。
ではどこがおかしいのかというと、前半部分の前提がおかしいということになります。
今回の2つのガチャでは、出るまで回すことができるとは限らないので、前提条件が成り立たない場合があります。
そのため、理論的には正しい文だとしても、このガチャに対する文としては正しくないと言えます。
この事実を踏まえたうえで、通常のガチャに対して「出るまで回せば必ず出る」は正しいのかを考えます。
前提条件は正しいか?
通常の排出率一定のガチャでは、大量に引くと当たりが出る確率は100%に近づきます。
そのため、先程の例のように、出るまで回すことができるのかどうかを簡単に判断することはできません。
ここからは個人的考察を書いていきます。
結論から言うと、通常のガチャでは出るまで回すことはできると言えます。
何回引いても当たりが出ないこともある という話がありますが、これは有限回の試行かつ引いたところまでの結果について言っているに過ぎません。
ガチャの不規則性の仮定から、未来の事象についてずっと当たりが出ないと保証することはできません。
また、大数の法則(大数の強法則)から、回す回数を十分大きくしていくと、『「ガチャ結果の中に存在する当たりの割合」が排出率に収束する確率』は1に収束します。
そのため、排出率が一定(有限確定値)ということも踏まえると、無限のガチャ結果の中には無限の当たりが存在し、その割合(密度)は有限確定値(=排出率)ということになります。
その中の1つの当たりを引くまで回せば良いわけです。
このことは、永遠に回したとしても当たりが出る確率は 99.999…% となるだけで出ない可能性もある というのは誤りであるということを言っています(99.999…%というのは、あくまで有限確定値の試行回数での話だということです)。
以上から、通常のガチャでは出るまで回すことはできると言えると考えました。
つまり、通常のガチャの場合、「出るまで回せば必ず出る」の前提条件は正しいということです。
結論
「出るまで回せば必ず出る」という文は論理的に正しく、前提条件も正しいということが分かりました。
したがって、「出るまで回せば必ず出る」は正しいと言えます。
これが筆者なりの結論です。
くだらない話を長々と書きましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
日常の些細な事でもよく考えると奥が深いことがたくさんあるということを心にとめていただければ幸いです。
それでは、また。
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